幕間 帰師おおう勿れ窮寇追う莫れ

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そう、朧君。貴方は私達の身代わり。だからこそもっと必死になって私達を生かす方法を考えてくれなきゃ困る。 「なら義弟よ、お前は今までの屈辱を捨てろと? 散々見下され、親の土地を我が物顔で搾取し、戦の駒として死んでいった同胞の怨みすら断ち切れと? ……あまり言いたくはないが、良くも悪くもお前は『他人』だよ」 「それは……」 旗色が悪くなった。言い返す台詞もないのか、俯いてしまっている。所詮は……。 「役立たずですか……」 思わず、言葉が溢れてしまった。 それと同時に、私の頬を何かが掠めた。その直後、小さな痛みと共に赤い血が流れ落ちた。 「……お前、今、朧を役立たずと言ったか? 自らも下手をすれば危ういというのに、それでも庇った義弟を役立たずと?」 冷めた瞳に炎が再び燃え盛る。激しい怒りで身を焼き付くさんばかりに。 「……わかった、お前等二人は殺す。絶対に殺す。例え何者が障害になろうとも必ず殺す。死ね」 「う、うぁぁぁぁぁ!! 七乃ぉぉぉ!!」 泣きじゃくって抱き付く美羽様を懐に庇う。絶対に殺させはしない。もう、誰も頼れないんだから。 ……でも、何かがぶつかる音と共に、剣が降り下ろされる事はなかった。 恐る恐る目を開けると、朧君が降り下ろされる剣を受け止めていたのだ。 「何の真似だ? 今なら冗談で許すけど?」 「生憎、女の子が目の前で死ぬってのは勘弁なんでね! 二度とそんな事にはさせないって意思は譲らないよ」 狭い空間で、小さな剣撃が繰り返された。 孫策さんは剣、それに対して朧君は偃月刀。狭い空間故に防戦になっている。 「くそっ! 黄虎! 」 朧君が苦しげに何かを呼び出した。その合図と共に、重い足音が聞こえた。 「ちっ! 江東の人食い虎か!」 首筋に剣を振るうが、なんとその虎はそれを爪で受け止めた。 「美羽! 七乃さん!」 差し出された手に、無意識で体が反応する。 そのまま抱き抱えられた私達は、朧君になすがままその場から離れて行く。直後、矢が頭を掠めた。黄蓋さんの仕業だろう。 「行くぞ黄虎!」
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