◆Prologue

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「いらっしゃいませ、…って栞ちゃんか。 こんばんは。」 「こんばんは、白藤さん。」  白藤仁さん。 この人に会うためだけに私は、週に一回程度、この店に顔を出す。 バイト中ではない奈美と一度来店した時に、白藤さんは私の名前を覚えてくれて、それからは会うたび、少しだけお話ができるようになった。 「外、寒かったんじゃないの?」 「寒いですよー。 すごい寒いです。 そろそろ雪、降るんじゃないですか?」 「まじかー…って、そんななのによく来るよね、ありがたいけど。」  寒さに晒されていた頬が赤いと、白藤さんは笑う。 くつくつと笑うその声に、心臓の音が一瞬、大きくなった。
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