◆Prologue

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「…おいしい。」  アイスを一口分掬ったスプーンを渡されて、口に入れれば、すごく私の好きな味で。 思わず言葉を漏らせば、白藤さんの微笑ましいと言わんばかりの柔らかな笑顔が返された。 「栞ちゃんの好きそうな味だと思ったんだよね。」 「これ、すごく好きです!」 「やっぱり。」  ふわり。 浮かべられた笑顔に、胸が苦しくなる。 これだけ店に通いつめていれば、好みの味を覚えてもらえて当然なのかもしれない。 けれど、どうしたって胸が高鳴ってしまう。 一つ期待するたびに、傷が増えていく。 傷つく理由が、増えていく。 そんなの、わかってるのに。 彼を想って、想えば想うだけつらくなるのなんて、ちゃんと分かっているのに。
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