一 《新月》

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 十一月に入って、気候もだんだん冬らしくなってきた。  一九九一年、十一月九日。あと一ヶ月で僕は二十三歳の誕生日を迎える。  夏の草むらの匂いや、春の暖かい空気が恋しくなることも時々あるけど、僕はやっぱり冬が一番好きだ。  今は午前五時。まだ真っ暗な空を見上げながら、柔らかい毛布にくるまってベランダのビニールチェアに座り、温かいココアをすする。今日は新月だ。星がよく見える。  晴れた土曜日の明け方は、時々こんな風に過ごす。  僕の彼女の硝子(しょうこ)も、よくそうしていると言っていた。硝子も今、こうして空を見上げているかもしれない。  東の空が明るくなってきて、朝が来た。腕時計を見るともう六時十二分。僕はマグカップと毛布を持って部屋に入った。
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