序章.二十歳の僕

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僕たちの体はすぐに熱を帯びる。僕が女の中に入る度に女は声を上げる。僕は自分の行っている行為や、周りに存在する物、時の流れに意味を見出だす事は出来ない。世界は色を失っているのだ。 女は僕との行為中に僕ではない誰かの名を呼び続けていた。   「何時かしら?」 「2時だ」   誰が為に朝は来るのか、誰が為に鳥は鳴くのか、その理由はいつまでたっても分からないままだが、それでも朝は来るし鳥は鳴く。 目が覚めると、僕の隣に女の姿はもう無かった。そこにあるのはシーツのへこみと、女の微かな香水の匂いだけだ。 僕は昨晩に飲みかけのまま放置していたウィスキーの瓶を手に取り、そのまま口をつけて飲んだ。 朝日はとても眩しくて目をまともに開ける事は難しい。   このようにして僕は二十歳になった。意識も記憶も不確かなまま、何の感銘も無く。 女が一ヶ月に一度か二度程度に会うセックスフレンドだと思い出すのに、それから二時間ばかりかかった。
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