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敵の最大射程距離は一歩兵が有する兵器の射程を遥かに凌駕している。俺たち歩兵が必死に進軍する間、敵は青みがかかった画面に写るこの戦場の俯瞰図を見ながら指示を出すだけで良い。一旦指示を出せば、攻撃までの行程を最適化された兵器の群れが一斉に唸りを上げ、俺たちは四肢を散らす。実に簡単だ。 本来ならこの戦場に歩兵の出る幕はない。 なら何故俺は、俺たちはここにいるのか。こんなところで自殺にも等しい行為に手を染めているのか。 あぁ、くそったれ! 「前進!」 大隊長の野太い声が聞こえ、俺たちは持てる力の全てをもって敵陣に向かって圧し進む。 俺たちに他の隊と連絡を取る権限はない。それは一重に軍隊という集団においての機動性を少しでも高めるためにほかならない。俺たちのような下士官が自らの上官にお伺いも立てずに他の隊と連絡を取り合っていたら、軍隊という生き物は身動きが取れなくなり内側から崩壊する。 ピラミット型の指示体系は至極当然のもので、俺もそのことにとやかく言うつもりはなかったが、察するに他の大隊も被害は似たり寄ったり、もしくはより酷く、壊滅しているものがほとんどのようだ。
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