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薮ちゃんと付き合い始めたのは一ヶ月前。いのちゃんは大学二年になったばっかりで、履修登録だ教科書先輩に貰うだ雑誌の撮影だって忙しいそうに飛び回ってたから、しっかり話した事なんてない。
いのちゃんに駅前で発見されたボクは、イートインのあるコンビニに連行された。
今日もこの肉まんが昼ご飯なんだって、うわーボク絶対大学なんか入んない。
「で?なんで薮?」
「もう、なんでみんな、なんでなんでって言うのかね~」
全く。いのちゃんと大ちゃんのくっつきそうでくっつかないコンビの事は誰も何も言わない癖に。
あ。
「…いのちゃん、悔しいだけでしょ。自分が大ちゃんと付き合えないのに、ボクが薮ちゃんと付き合い始めたから」
ピンときた鋭いボクのツッコミに、いのちゃんはムウッと唇を尖らせた。
「それもあるけど、そうじゃねえよ。なんで薮なのって聞いてんの」
「だから好きだからだってば」
「はいはい、でホントは?」
いのちゃんは、いつものいのちゃんからは考えられないスピードで肉まんをモサモサ食べ終わるとビシッとボクを指差した。
「もう。なんで信じてくんないかな~。光ちゃんもさ、渋~いカオで嘘付けって言うし」
「そりゃ、お前がシレッとしてるからだろ、付き合う前も後も。薮に片思いなんかしてなかったし。別に嬉しそうでもないし」
さすがいのちゃん、大学生。
みんなとはひと味違うよね。
ボクが思わず笑ったのを見逃さず、いのちゃんは眉を寄せた。
「……別に何でもイイけどさ、お前。なんか変な事考えてんなよ?」
失礼だなあ、いのちゃんも光ちゃんも。
「もう、まるでボクが薮ちゃんを取って食おうとしてるみたい。ボクが食われる側なのに~!」
ボクが可愛くそういうと、いのちゃんはげんなりため息をついた。
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