不幸すぎる少年

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 ことの発端は、中学三年生に上がる前の中学二年生、最後の夏。  セミの鳴き声がやけに大きく聞こえる暑い日だった。その日は、全国的にもいい天気に恵まれ、ぼくの住んでいる東区は、特に雲ひとつない快晴。  その頃のぼくの席は、ちょうど窓の横。  開いている窓から涼しく心地よい風が入り込み、まるでぼくを包み込むように通り抜けていく。  国語の時間で教室は、鉛筆を走らす音と先生の声だけでほとんど静かだ。どんどん瞼が重くなり、そろそろ頬杖を突きながら眠ろうとしていた。  だが、勢いよく開いた教室の扉の音とぼくの名前を呼ぶ先生の声で眠気が吹っ飛んだ。 「草野!」  ぼくは飛び起き大げさに席を立ち、大声で「はいっ!」と答えた。  周囲で笑がおきる。ぼくは、恥かしくて顔が熱くなったが、次の言葉で青ざめることとなる。 .
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