不幸すぎる少年

7/41
前へ
/229ページ
次へ
 震える手で母の頬を触る。氷のように冷たく、地面のように硬い頬。  手から伝わる感触は、明らかに生きていないことを証明していた。    両親を交互に触っても同じことだった。そこで、初めて両親が死んだことがわかった時、ぼくは、安置室に響き渡るような大声で泣いた。  両親は、車の同士の衝突事故で亡くなった。悪いのは、両親ではなく、ぶつかってきた側。  目撃者によると、西区にある大きな川にかかる橋を両親の車両が走行していると反対車線からよそ見運転の車が激突し、その勢いで川に転落。  両親は、車が激突したさいにドアがへしゃげ車内から脱出する事ができず、そのまま溺れ死んでしまったのだという。  ぼくは、そのよそ見運転していた運転手が許せなかった。 .
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加