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「さて、と…。これで粗方紹介は終わったかな」
会長をからかって、副会長とお茶して、アキラくんにハグして。
一通り回った私達はなだれ込むように部屋に戻った。
部屋に入って紅茶を淹れて、お疲れ様なんて挨拶をすれば、蒼は納得してなさそうな顔で私を見る。
「生徒会の皆様だけでよかったんですか?神崎さんとかは…?」
「あぁ、神崎ね…。彼は私の親友だけれど、仲間とは少し違うんだよ。また別の機会に紹介するさ」
「別の機会、ですか…。まぁ、それはそれで構いませんが…。兄さん、紹介と言いつつも結局カメラをまともに回したのは会長のときだけでしたよね?そのときの映像は結局消してしまいましたし、大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、大丈夫だよ。読者の皆様には音声だけで十分に紹介できただろうから」
「読者…?」
「気にしなくて良い。きっと蒼にも時期にわかる」
不思議そうな顔をして首をかしげる蒼は、本当に可愛らしい。思わず口元が綻ぶ。
どうして私達は双子で、顔もそっくりなのに、弟はこんなに可愛いのだろう。
(私が鏡を見ながら同じ仕草をしても吐き気しかもよおさないというのにまったく…)
「…兄さんは、」
「なんだい?」
「いえ、なにも」
言葉を濁す蒼。なんと続けようとしたのか、とても気になるけれど。
彼は誰に似たのかとても頑固だ。一度言葉を濁してしまっては、もう話してはくれないだろう。
栗色に近い髪。髪と同じく、他より色素の薄い瞳。
中性的な顔立ちは、少年のような幼さと妙な色気を感じさせる。
頑固で、真面目で、礼儀正しく、兄の私にすら敬語を使い、何事も自分の中に溜め込みがちな弟。
しかし学園での評価としては私と同じく悪戯好きで、溌剌として、無邪気な子供という仮面を被った演技派な弟。
もっと頼ってほしいと思うけれど、きっと頼りない兄にはこれ以上頼ってくれないだろうな、なんて。
少しの寂しさを胸に抱きつつ、私はまた一口、紅茶を飲んだ。
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