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「待て、なんで2本しかない? 誰かもう食べたんじゃないか?」
ぼくはそよぎが転がる横で冷静に分析する。
「私は食べてないわよ!」
「ぼくだって」
となると当然ぼくとそよぎの視線はあおいに注がれる。
「それなー、昨日、しきが置いてった」
「ああ?」
「あのアホ帰ってきてたの?」
ぼくたちは4きょうだい。
男1人に女が3人。
しきもその1人で漢字では四希。
中でも一番の年上で、すでに社会人である。
「昨日なー、仕事の合間に遊びに来て置いてった」
「2つだけ?」
「うん、仲良くケンカしなって」
なんという奴だ。
「性格悪いな」
「即スネを折りに来たあんたが言うな」
「照れるね」
「照れ死にしろ」
「がんばる」
「それで、どうするの? ここでアイスを争うのはあのアホの思うツボみたいでシャクにさわるんだけど」
「確かに」
今だってアイスを巡り骨肉の争いを繰り広げるぼくたちの想像をおかずにご飯を食べているに違いない。
「じゃあ四希の一番予想だにしない展開に持っていって期待を裏切ってやろうよ」
にやりとそよぎが笑う。
「なにをするの?」
「煮て庭にまくとかどう?」
「煮るっていうワードがなんかトラウマだから却下で」
「そう? じゃあプランターに植える?」
「いい感じに意味不明だな。 それでいくか」
「あおいはアイス食べたい」
「・・・・・・」
そんなにつぶらな瞳で見るんじゃない。
なんかもう、自分がものすごく汚れきった人格に思えてくる。
見るとそよぎも気まずそうにしている。
「い、いや、原点を忘れちゃいけないな。 アイスは食べるものだ。 じゃあ仲良く三等分しないか? 四希の意表を十分突いてると思うぞ」
「そ、そうね」
「仲良くわけよー」
こうしてアイスを分けることに決まった。
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