少年クラーケン

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「発注した三体のキマイラを受け取りに来た。」  黒ずくめの男の一人がそう言って、ベラに一枚の書類を突き付ける。 「馬タイプと山羊タイプと、イカタイプの注文だったはずだが……?」  男は研究室内に素早く目を走らせると、俺の所で不自然に視線と言葉を途切れさせた。  ぎこちなくベラが明後日の方向に顔を背ける。 「――イカタイプのキマイラはどこだ?」  男は直ぐに何も見なかった事にしようと決めたようだった。無意味に天井の片隅を凝視するベラに向けて淡々と詰問する。 「イカタイプは?」 「そ、そこにいるじゃない?」 「…………。」  うねうねと八本の足をくねらせる俺に、ベラの細い指先が突き付けられる。 「おい、ふざけるなよ。こいつはタコじゃないか?」 「違うわ、イカよ!」 「いや、タコだろう?」 「イカだってば!」
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