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「テルの良い所は自分に鈍感だって事だな」
ギャハハと笑いながら僕の肩を何度もポンポンと叩いた。
「まぁ、様子見しとくわ。面白いし」
不気味な笑みを浮かべたハルちゃんを見て、また何か企んでいるのではないだろうか、と心配になってくる。
放課後になり帰り支度をしているとポケットの携帯が震えた。
開いてみると父親からのメールでダッシュで帰って来い。と言う内容だった。
ハルちゃんから放課後喫茶店に誘われたがそれを断り家にダッシュする。
今日は晴れてるけどジメジメした梅雨時期の湿気は、多量の汗を発生させる。
汗染みは落ちにくいんだよな・・・と主婦的思考が先行してしまう。
父親の事だから、朝言ってたレストランの予約時間を間違って連絡したんじゃなかろうか?
例えば8時と18時を聞き間違えたか言い間違えたか
そう言うドジっ気たっぷりの行動を父はたまにする。
そんな父のいったい何処に母は惚れて結婚したのだろう・・・
家事をやってるとわかるのだ。
文句ばかり言って一切手伝いなどしない典型的な亭主関白男。
僕が女なら絶対にあんな男とは結婚なんてしないだろう。
息を切らせてようやく家に帰りつくと、ピシッとスリーピースのスーツに身を包んだ父親が姿見の前でポーズをとっていた。
「何やってんの?」
僕の呆れた言葉に、父は柄にも無く顔を赤らめ、似合うか?と聞いてきた。
適当に、うん、と返事する。
大丈夫、ズボンの後ろポケットの裏地が出ていようが誰も見ないから・・・黙っていよう。
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