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「まぁそう言う訳だ。ほら綾香さんに挨拶しろ」
今、目の前には料理が運ばれていてナイフとフォークが置いてある。
さぁ、ナイフでめった刺しかフォークで目ン玉を抉り出すか・・・
「ナイフorフォーク?」
父に直接聞いてやろう!!
「ま、まぁ落ち着け照彦・・・忙しくてさ・・・言う暇なかったんだ。ほら、それにさドッキリみたいで楽しかったろ?な、な」
僕の右手にはナイフ、左手にはフォーク・・・そうだ両方使っちゃおう!!
そんな僕の虚ろな目つきに気付いた父は引きつったように頭を下げた。
「すまん照彦。父さん怖かったんだ。お前に反対されるのが怖かったんだよ」
母が無くなって5年・・・父さんはずっと寂しかったのかな?
家を建てて直ぐに亡くなった母・・・
新しい家には母の思い出もなく、その生活臭すらもなかった。
母を思い出せるものは写真や昔から使っていた食器や家具といった道具ばかり・・・
今から創る筈だった生活を目前にして失ったのだ
父さんも寂しかったんだろう・・・
「反対なんかする筈ないだろ・・・ただ・・・言って欲しかったんだ」
父が決めた事に最初から反対なんてする筈が無い・・・
だって僕は母さんと約束したんだ・・・
「ねぇテルちゃん。もしお父さんが再婚しても反対しないでね・・・お母さんは、あなたやお父さんが笑っている人生を願っているのよ。じゃないと天国に行きたくても気になって行けないじゃない?フフフ」
最後まで笑顔だった母さん・・・僕は父さんの為って言うより母さんの為に約束したんだ。
母さんが天国に行けます様にって・・・
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