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「虫取りしてんだけど」
リーダー格の少年が面倒くさそうに答える。
他の子たちは俺に見向きもせず、幼虫いじりに夢中になっている。
「もうやめてあげたらどうだ?」
「えーいいじゃん」
「良くない。この虫だって生きてるんだ。君たちと同じだ、一つの命なんだよ。玩具じゃない」
「何ワケわかんないこと言ってんの? これがおれたちと同じなわけないじゃん」
「え? これ生きてんの?」
「は? 冗談でしょ」
少年たちは一斉に不思議そうな顔を浮かべて俺を見た。
まさかこれ本気で言ってるのか?
この子たち、虫が生き物だってわかってないのか?
「いいから離してやるんだ」
「チッ、うっせーな。もう虫ショップ行こうぜ」
少年たちは持っていた棒を捨てて、足早に去っていった。
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