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目が覚める。目の前は澄み渡った青空だ。日差しが眩しいくらいに降り注いでいるのに、瞳には柔らかく入ってくる。
「おや、お目覚めかい?」
声のした方に顔を向けるため体を起こす。どうやら仰向けで眠っていたようだ。
手をついたところで気づいたが、砂の上のようだ。
「…砂漠?」
あたりを見回すが、一面砂の景色だった。
「おーい、こっちだ、こっち」
声がした方向はちょうど後ろのようだ。首をまわして目を向けると、砂地に椅子、その背もたれに身体を向けて座っている少年(のように見える)がこちらをみている。
「おはよう。存外にお寝坊さんだね」
「…誰?」
「最初の質問はそれでいいのかな?」
質問の意図が読めない。まあ、聞くことはもう一つある。
「ここはどこだ?」
そして思い至る。その少年が何を言いたいか。
「それで、俺は…だれだ?」
何も思い出せない。俺の名も。歳も。家族も。居場所も。
「俺に何をした?」
警戒をにじませる俺をみて、なお嬉しそうにそいつは言った。
「警戒しなくても危害は加えないよ」
「なら、知っていることを全て話せ」
「そう敵意を剥き出しにしなくても」
あの頃の僕にそっくりだ。と笑いながらつぶやくのが聞こえた。その笑いはどこか悲しそうで、懐かしそうだった。
「まあ、いいでしょ。まず、僕は神様です。ほら、敬え敬え」
「くそっ。精神がお釈迦になってやがる。だが、この場合狂っているのは、お前か?俺か?」
「ちょ、ひどいなぁ。ほんとーなんだよ?」
「現実を見る勇気が持てないほど俺は追い詰められているということか…寝よう」
「まってまって。寝ようとしないで」
再び眠りに着くべく、横になろうとするのを自称、神が起き上がらせようとする。
「なら最初からやり直せ。いいな」
「むー、やり直せって言われても、僕は神で、君は…て寝ないで~。起きて~」
「…テイク3だ。やり直せ」
「僕が神じゃないなら、なんだっていうのさ~」
「俺の心の弱さが生んだまやかし、バグだな。あえて名前をつけるなら…うん、ウメダでいいか。やあ、ウメダくん。どうした。えらく落ち込んでいるじゃないか」
「…ウメダ。そうか、干渉が…」
「…どうした?」
落ち込んでいるというよりは、没頭して自分の世界に入っている自称、神、現ウメダくんに声をかける。
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