第二章 能力とやら

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気を取り直してあたりを見回したところ、木が生い茂っているのが分かるだけだった。 「…森…か。なるほど。どこまでもテンプレだな」 声に出してみたが、当然の様に何の反応もなかった。風が流れ、葉が擦れる音が木のささやきの様に通り過ぎていく。 俺は案外、都会っ子だったのかもしれん。この静けさ。安らぐというより不安になってしまう。とにかく、人のいるところへ行くことを当面の目標にしよう。 とは決めたものの、ここはどこなんだろうか?見知らぬところをむやみに歩くことほど危険なことはない、というのは俺でもわかる。が見知っているところなんかないんだよな、この世界。 いや、記憶喪失だから、元の世界のことも知らないんだが…。そうだ!こういう時に[全知]を使えばいいんだ。…どうやって使うんだろ? まずいな。初手で詰みって、これなんて無理ゲーだよ。というかどう使うか教えておけよ、あの自称神のウメダさんよぉ![全知]起動とでも言えばいいのか… 「って、うおぉ!?」 『起動完了しました。検索対象入力待ちです』 と書かれた文章が電光掲示板のように右から左へ流れていく。といっても、感覚的にというだけで、視界に映っているわけじゃない。上手く説明できないが、脳内上でということにしといてくれ。妄想を強制的に行われる感じで、やや不快だが…。
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