第二章 能力とやら

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と、水面に映る像に目がいく。人のようだけど誰だろう、って俺か。まるで初めて見る人のように感じられて、一瞬、分からなかった。 これはジュメ・ビュっていうやつか?それとも、死んだときの記憶障害のせいなんだろうか? ここまで障害があるとはよほど頭にダメージを受ける死に方だったんだろうな。なんてったって事故死だし。 と、割れたスイカを想像してしまい、思わず頭を振った。 『[平衡崩し]の使用権凍結を解除しました』 ぬぉ!?いきなり表示されると驚いてしまうわ! そういや、使用を禁止されていたっけ。 …使う練習は必要だよな。今後、この世界に起きる事を考えれば。 「うしっ!」 頬を叩いて気合いを入れると、川辺にあった小石を拾う。 先ほど、[全知]の意外な利便性が発覚したので、小石を[平衡崩し]で浮かせるには、で検索してみる。 ふむふむ。思った以上に方法があった。その中で、とりあえず、重力と浮力の平衡をいじってみる。 「よいしょ、っと」 小石を放すと、小石は自然落下を始める。 重力がまだ強い。もうちょい浮力優位で。 小石の落下スピードが遅くなる。 もう…ちょっと。 小石は徐々に減速し、地面の数センチ手前でその落下を完全に止める。
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