第三章 テンプレとやら

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響いた叫び声は女性のようで、どうやらただならぬ事態のようだ。 まさか俺のせいじゃないよね、と少し思うもひとまず、声の元へ急ぐべく、まず、[全知]を起動する。 [全知]が算出した方向へ走り出すが、森は獣道なので全速力で走る訳にはいかない。 転ばないよう着実に進みながら、できうる限り急いだ。 テンプレだと、モンスターか、盗賊に襲われている少女を颯爽と救って一件落着なんだろうが、いろいろな意味でテンプレからずれている自分はどうなるか分からない。 もしかしたら間に合わないかもしれないし、むしろ、間に合っても返り討ちに遭いそうな気がする。なにせ、 『[平衡崩し]は使用許可できません』 と、さっきからでているからだ。そりゃ、誰かの悲鳴を聞いて、平静でいられるほど俺は、図太くない。 そこで、何やら人の影が見えてきた事に気付いた。[全知]が示す距離からそれが、悲鳴があった場所だとわかった。 とにかく状況を確認しようと、物音をさせないようにこっそりと木の影から様子を伺う。 みると、倒れている男が1人。肩を押さえうずくまっている男が1人。そのそばに女性が1人と、その女性に守られるように抱かれている少女がいて、その周りを20人ほどの男達が各々武器を携えながら囲んでいるようだ。
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