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「悪い、悪かった。話を進めてくれ」
「じゃあ、さらっといくよ?まず、君の名前は田中大樹。享年16歳。死因は…」
「はい、ストップ!俺の名前が思いのほか地味だったことに声を大にしてツッコミたいところだが!…きょ、享年?えっ、じゃあ、俺死んでんの!?」
「あなたは死にました」
「ちょ、そんなさらっと言わないで!?えっ、まじで!?」
「あなたは死にました」
「やめて!どこぞの初代RPGみたいな簡潔さで言わないで!?」
「あなたは死に…」
「やめろおぉ!!」
「もう、うるさいな~。どんな言い方でも事実はかわんないよ?」
「だとしても、こう、こっちの気持ちも察してくれたっていいだろ!?…これは夢だ。こんな幻想俺がぶっこわ…」
「せないから。ほら、落ち着いて。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。ん。落ち着いた。すまん。…それで、続きを話してもらっても?」
「まさかの突っ込み放棄!?ヒッヒッフーだよ?ヒッヒッフー」
「落ち着かせるための呼吸法だろ?どこにツッコミ要素が?」
「(ああ、素で知らないんだなぁ)そうだね。じゃあ、えーと、君は16歳で死にました。死因は事故死。そのときのショックで君は今、軽い記憶障害を起こしています」
「…事故死…か。それで…」
「加害者側については、何も言えませ~ん」
「じゃなくて、俺の家族とかは?」
「家族?母がいるだけだね~」
「母さんは無事なのか?悲しんでいたりとか…」
「割と楽しくやってるよ~。ひひひ」
「そうか。…ならいいんだ」
「ん?ちょっと予想外だった。…君が死んだのに楽しくやってるんだよ?」
「悲しまれるよりはいいさ。愛されてなかったのかもしれないけど、俺は顔すら思い出せない。この記憶障害って戻るのか?」
「生前のことは死後どうしようもないんだ。だから望み薄かな」
「そっか。っていうか、今から天国だか地獄だかいく俺に生前の記憶なんか必要ないしな」
そうだ。死んでしまった以上、生きていた世界のことなんて聞いたところでどうしようもないんだ。
…さらっと言ったけど、おれ、まさかの地獄行きじゃないよな?くっ、記憶がないから確証が持てん。
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