二章 魔という存在

2/26
前へ
/55ページ
次へ
 ルーナ達一行はまだ宿屋に止まっていた。  これでもう四日目。戦士オウエルと魔法使いミナの容態は徐々にではあはるが回復の兆しを見せていた。  しかし、一方でこれ以上ここに居座り続けるのは限界だった。つい今し方もルーナは街の長から遠回しではあるが、早く出て行くように釘を刺されたばかりだ。  ずっと回復魔法の使い続けで疲れたのだろう賢者のユキも今はベッドで眠っている。  路銀は尽きた。ルーナは三人の寝顔を見ながら決心を固める。 (私の体で、三人が救われるのなら安いものだ。うん。これは仕方のないことなのだから)  もう日は沈んでいる。出発を翌朝とするなら、稼げるのは今からしかない。  ルーナはもう一度三人の寝顔を眺めると、まだ幼さの残る顔立ちを少し弛ませ、立ち上がると静かに宿屋を出て行った。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加