二章 魔という存在

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――とある鉱山にて。  気が付いたらそこは不思議の森の中でした、というメルヘンチックな展開はどうやら真琴には縁が無いようだった。 「いやだからっていきなり奴隷はヒドすぎだろ常識的に考えて!!」 「そこっ、うるせぇぞ! 口動かす暇あったらまずは体を動かしやがれ!」  割と多ジャンルにかけて小説を読んでいる真琴だから、奴隷制については少なからず知識はあるし、現実逃避するほど取り乱す事態でもない。  しかし、すぐそこで鞭を持って怒鳴り散らしているのがどう見ても人外の魔物であれば話は別だ。 「そもそも俺は肉体労働には向かな――ってぎゃあああ!! 小指がっ!! 足の小指が岩に激突した!! 死ぬ!! これは軽く死ぬる!!」 「ぎゃあぎゃあうるせええええ!! てめぇ新入り、鞭の餌食になりてぇか!!」 「だって痛いもの!! 鞭!? はっ、そんなもの俺が本気を出せば痛くも痒くもないね!! 小指は痛いけど!!」  両者とも無駄に大声で叫ぶものだから鉱山で働く他の奴隷たちもなんだなんだと集まってくる。  本来ならば魔物は指揮官として見物を解散させるべきなのだが、魔物はむしろ真琴を見せしめにして奴隷たちに恐怖を植え付けようと考える。
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