序章 物語の限界

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 長い砂漠を死ぬような思いで抜けた勇者たち。  街を見つけて歓喜した彼らはすぐに絶望の淵へと叩き落とされる。 「……援助はもう出来ない?」  ルーナ=レイヴィは思わずその街の長の言葉を聞き返した。  「ああ……。つい先日だ。ライビック王からこれ以降、以前からの勇者への特別待遇義務を無しとするとの勅命が伝達された。恐らく他の街も同じだろう」  あまりに冷酷なその言葉に、今まで戦士や僧侶、魔法使いに余計な心配を与えまいと頑張ってきたその瞳に絶望の色が滲む。  女三人、男一人の少数パーティーにすら払う金が無いほど今の国はヤバいらしい。  支援の断絶はルーナたちへの実質死刑宣告だった。 「そん……な……。お願いします、何とかならないでしょうか。みんなもう三日も食べていないんです……」  砂漠での戦闘で傷付いた魔法使いと唯一の男である戦士、二人を看病するために宿を取って僧侶に見てもらっているのだが……このままでは宿代さえ払えない。  長に訴えかけるルーナの瞳からはいつの間にか涙が流れていた。
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