二章 魔という存在

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 じりじりと後方に下がらざるを得ない状況。しかし後ろには円形に並んだ野次馬たちがいるため逃げ場にも限界がある。 (あーもう! 普通敵が絶対に倒せないなら仲間が助けてくれるんじゃないの!? 割と誰でもいいからヘルプミー!) 「もう後ろに逃げ場はないぞ? 大人しく我らが魔族の血肉となるがいい!!」  指揮官から繰り出される強烈な一撃。それは正確無比に真琴の脳天を狙って突き進んでくる。  遂に人生終了のお知らせ、と真琴が諦めて目を堅く瞑った、その時だった。 「……こっち!!」  ガバッと手を何者かに掴まれたかと思うと、もの凄い勢いで野次馬たちの中へと引き込まれていく。  手を引いている者の正体は分からないが、野次馬たちが次々と道を空けてくれ、とうとう円形の外側まで出ることに成功した。 「どこだっ!? 奴はどこに逃げた!? ええい、貴様らどけっ、どかんか!」  指揮官が鞭をふるって奴隷たちを散らそうとするが、それが逆に徒となって奴隷たちが四方八方に動こうとするものだから真琴が消えた正確な方向が分からなくなってしまう。 「クソっ!! 魔物たちよ集え!! 逃げ出した臆病者と、奴に手を貸した者を捕らえるのだ!!」  指揮官は叫ぶが、その声すらも奴隷たちの逃げ惑う喧騒にかき消されていった。
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