二章 魔という存在

9/26
前へ
/55ページ
次へ
 恐らくここが洞窟内の最深部。洞窟内にして唯一外と繋がっている場所。 ――言うなれば、死体廃棄所。  先ほど魔物が言っていた再利用出来ない人間をここから海へと棄てるのだ。  その水辺まで来たところで、いきなり少女はくるりと真琴の方を振り向いた。 (やはりあの男は神だった。じゃなきゃこんな可愛い女の子と出会えるなんて俺の人生には考えられん)  真琴はあえて詳しく形容しようとは思わなかった。可愛い。こんな状況だろうが、それだけの情報で真琴は幸せに埋め尽くされた。 「えっと、初めましてだけど私と運命を共にしてください」  衝撃の告白だった。まだお互い名前も知らないのにも関わらず。目の前の少女は確かに真琴に向けてそう言った。 ――ええ喜んで。 本来ならそう即答したいのだが、いかんせん彼女の顔が真剣そのものかつ死に対する怯えを感じさせるものだから、今のは愛の告白ではないのだろう。残念ながら。 「……えっとどういうことかな、って聞いてもいい?」  真琴が尋ねると、少女は小さく頷くと、水辺に置いてある大きな箱を指差して言った。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加