二章 魔という存在

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「私と一緒にあの箱に入って、ここから逃げ出しましょう。あなたが生き残るにはそれしかありません」  つまり、この少女は一緒に駆け落ちしようと誘っているのだ、と真琴は勝手に理解する。  いささかの不安はあるが、これ以外に方法はないと言うのだから仕方がないだろう。  真琴が二つ返事で引き受けようとする前に、少女はさらに言葉を付け足した。 「……ちなみに、海には大型の魔物も住んでいますから、陸にたどり着けるかどうかは賭です」  一気に不安要素の方が拡大する。  何でこの世界を助けに来た勇者がいきなり一か八かで死ななきゃならないのか。 (そもそも出発地点を指定したのって――)  真琴は再びシンキングタイムに突入しようとしが、上の方から魔物の甲高い鳴き声が聞こえて現実に引き戻される。  どうやら考えているヒマは無さそうだった。 「時間がない。見ず知らずの俺で良ければ、その運命とやらご一緒させてくださいな」  我ながら格好良く言えたものだと真琴は内心でドヤ顔する。  少女も力強く頷くと、すぐに箱の方へと走り出して出発の準備を始める。
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