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それにしても夢なら早く覚めてほしい、と真琴は強く願う。何が悲しくて夢の中でまで男に会わなくちゃいけないんだ。しかもイケメンだから余計に腹が立つというもの。
そんな真琴の胸中を知ってか知らずか、青年は微笑するとこんなことを言い出した。
「もし仮に、これが現実だとして、もう一度問いましょう。あなたはどう思いましたか?」
意味が分からなかった。質問の意味が、ではない。その質問をすることの意味が分からないのだ。
微妙なところで勘が冴えてる真琴はここで初めてこれがただの夢ではないと気付き始める。でなければ今感じている感情――この青年に対する奇妙な恐怖の説明がつかない。
「これが現実なら……か、そうだな、まず申し訳ないと思う。俺が働かずに使ってる金でどれだけあいつ等が助かるのかって考えると、な」
ニートではあるものの、真琴にとってこれは嘘偽りない気持ちだ。世界のために働いてるのに辛い思いをしている勇者たちと、世界から逃げて働くことを拒絶している自分。どちらが生きるべきかは言うまでもない。……もちろん真琴に死ぬ気はさらさらないが。
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