一章 神は“主人公”を選ぶ

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 透明なイメージを与える空間に、圧倒的な存在感を放つ黒い物体。  しかし真琴には物々しいというよりある種の神々しさを感じさせた。  男は箱に軽く触れながら、真琴の方を振り返る。 「初めに謝っておくべきでしょう。これから告げることは事実です――」  そこで区切ると男は視線を真っ直ぐ真琴に向けて続ける。 「――しかし、事実でありながら否定することも出来るのです。全ての選択権はあなたにあります」  思えばここに来てからずっとそうだが、本当にこの男は何を言っているのだろうか、真琴にはさっぱり理解できない。  事実を述べるというのに否定出来る? いくらお勉強が出来ない子である真琴でも、それが物理法則その他の倫理観全てを無視していることぐらいはわかる。  返答出来ないでいる真琴に、男は何万年も昔から張り付いたような微笑みを浮かべたまま言った。 「あなたは主人公、そして先程お見せした映像の世界――そこがあなたの活躍の場、ということになります」
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