一章 神は“主人公”を選ぶ

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 まるで決められていた台詞を読み上げるように、青年は言葉を丁寧に重ねていく。 「何から説明すればいいのやら、正直全てを伝えることは出来ません。しかし先ほどの世界、あれは決して仮想などではなく、私の管理する世界――あなた方の生きる世界と何ら変わりはありません」  今の真琴のような状態をよく呆然とかいう――というより真琴もよく使う――が、実際に経験している身になるともうそんな思考回路すら回らない。 ただ相手の言葉に翻弄され思考の渦に飲み込まれ、そして追い付かない理解に無理やり蓋をするよりない。 「うん、把握した」  当然嘘である。何を、と聞かれればそこまでだが、もう一度同じ話を聞いたところで理解が及ぶとは到底思えない。 「さすがです。ではアナタを派遣する建て前については以上です。次に――」 「えっ」  どうやら気付かないうちにあの世界に派遣される手はずになったらしい。これが大人の交渉術。いつの間にか謀られていたことに真琴は純粋に恐怖する。
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