嫉妬しっとり

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じゃあお前はどちらなんだ、結城は優しく聞いた。先ほどの無礼な口振りはこの男の性なのだから仕方ない。男は人を怒らせたいのだ。 「もちろん、不快だね!」 ああほら、やっぱり。 結城は静かに本を机に置いた。 いま教室は授業中で、しかし先生は実習と叫んで恋人の下へ走っていって、クラスメートの視線を独占している。その中には結城の恋人の鶴屋もいるが、その左手は下品にも尻軽そうな女のス力ートの中に入っている。 「わざわざそれを言いに?」 不快ならシカトすればいい。結城が鶴屋にするように、鶴屋が結城にするように。 お互い見ない振り、これが一番。 「何か誤解してるようだから宣言しておくけど」 男はもったいぶって前置きをして、鶴屋をちらりと横目で見た。 「僕はね、君が僕以外に嫉妬してるのが不快なんだ。つまり君が好きなんだよ」 からかっている、また怒らせようとしている、そういうには男はあまりに真剣な目をしていた。 結城はため息を吐いた。そんな事か、と。 「鶴屋と俺は好きあってもなければ付き合ってなんかもいない。付き合ってる奴があんな事するか?」 鶴屋のスカートに潜ったままの手は、その一言に慌てて飛び出した。が、わざとらしく女が嬌声をあげ、クラスメート全員から睨まれた。 「なら問題ないね。僕と付き合おう」 僕程の優良物件はないよと男は自信満々で言い放った。確かに男は優良物件だった。それは結城から見ても。 「お前が鶴屋をすすめたんじゃないか。俺のきもちをしりながら」 結城は二週間前男に告白し、結城が男だという理由から玉砕した。そしてそのまま男は自分を愛してると言った結城に鶴屋をすすめたのだ。
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