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理緒は、
一つだけ、心に決めていたことがある。
バカを演じても、楽しかったって思って貰いたい。
盛り上がっていない席には、
順々に女の子を入れ替える指示していくのがママの役目。
そんな席への指示がくるとき、
プレッシャーとも思ったが、
私は、試されてるんだ、とも思っていた。
盛り上がらせることができなかったことも、もちろんある。
それは経験不足と、知識不足と、あとはお客様の好みもあるのかな?
そういうことで、
単にダラダラお酒だけ飲んでいたわけではないので、いちお、念のため(笑)
さて、林君の話に戻る。
見た目には、真面目な林君だったが、お姉さんの話を聞くと、どうもストーカー入っているっぽかった。
厳密にいうと、警察に言う一歩手前ってやつだ。
しかし、お店に来てくれる常連だし、恩義もあるので、そこまで行かぬうちに改心して欲しいなっていうママの想いを聞かされた。
そこで、極秘司令がきた。
「理緒ちゃんは、うまくできるでしょ?」
その一言に、どんな意味が隠されていたか、おわかりだろうか。
「頑張ります。」
といって了解した。
お店にとって、
女の子にお客様がつくのはいいことだけど、あまり入り込んでこられるとバトンタッチとなる。
うまく次にまわして、店からはなれないようにする。
お客様の気持ちすら、
コントロールするのだ。
振られて落ち込んでいるところに、優しく声をかけられると、
そっちに甘えたくなる、簡単にいえばそんなアクションをつくっていく。
餌ともいえば、種ともいえば
いろんな呼び方もできる。
ママから言われた瞬間から、林君へのアタックがはじまった。
もちろん本当の感情なんてない。あくまでも仕事。
お店という映画の、
ママというシナリオに沿って、キャストが演じるのだ。
もちろん、
ほんとの映画になるわけでもない、リアルなのでぶっつけ本番の、アドリブ重視。
オーディションを受け続けているような、試されてるんだって緊張感はすごくあった。
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