誘惑

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何かに取り憑かれるように、 はまっていった。 ロッキーに‥? それは、今でも疑問だ。 当時は何か、新しい刺激が常に欲しくて、ある意味で ストイックだったと思う。 若さゆえの、勢いもある。 ロッキーという人は、 人間的に、めずらしい感覚の ひとだとおもったし、何より一つの言葉に複数意味をもつ「ことば遊び」がうまかった。 話す口調は、 いろんなマルチの人がいるけど「まさにマルチ」というような感じではない。  遠くになりすぎず、 近すぎず・・・ (意味不明かな‥?) 肝心なところをとにかく 「聞かせて!!」と こちらから言ってしまう。 どんどん興味深くなった。 今思うと、新手の心理誘導であるが、当時は固定概念を吹き飛ばすようなものであった。 彼は、頭がよかったのだろう。 ちゃんと商品もつかってみて、 みんなに教えた。 むずかしいことはない。 何も抵抗はなかった。 ただ、淋しかったのは、 マルチをしているというだけで、友達の数はぐんと減った。 「ネズミ講やん!」 「もう連絡しないでください。」 人を騙して、金儲けしている。というイメージがつくらしかった。 その時は、周りが大人なので 大人が言うことを鵜呑みにしていたところがあった。 「マルチはね、ねずみ講ではないんだよ。」 「みんなは知らないだけで、いつかわかるときがくるから。」 「自分がコマーシャル変わりになって、商売をするんだから、自営業といっしょだよ。」 まいもいっしょに、 「頑張って広げようね! 良いものは良いって 言っていいもんね!」 とはいいつつ、 彼女は少し大人びていたから、 マルチにドカンと はまることはせずに メンタル面でいろいろ サポートしてくれていた。 まぁ、なんだかんだで、 いい経験だったと思う。 恥じてはない。 視野は確実に広がった。 しかし、 そのせいで、生活が不規則になり、うまく調整できなくなったわたしは、結局体を壊し、会社も休みがち。 咽喉にも炎症をおこし、 毎日注射をうちにいって 腫れを押さえていた。 大好きな先輩達は皆やめていき、そのころ私もドクターストップがかかった。 そのまま長期休暇を申請したら、会社からは拒否された。 自己退職というかたちになった。
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