誘惑

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ロッキーは、 だんだん精神的におかしくなってきちゃって。 ひどいときはかんしゃくを起こしたように怒鳴り散らし、変なことを言い始めてきた。 唐突に違う話をしたりとか、記憶が散漫で、言ってないことを言ったといったり、そういうこと。 最初に感じた魅力のカケラも 残さないほどに、 彼は暗闇に墜ちていった。 最後はあまり覚えてないけど、 いきなり怒鳴られて、 ひどいこといわれたってだけ覚えてるかなぁ‥ こういう仕事で、 男の人が上に立つと 男的指導になって、 「やれ!つぎつぎやれ!」 「今度はこうしろ!」 命令みたいだし、 急かされちゃう。 あたしはあたしのマイペースなやり方だったからそんなとこをみて、 「やる気ないんじゃないの」 とかいわれたら悲しくて。 見返してやろうとかより、 ふつふつと沸いていた マルチへの違和感もあり、 何より精神崩壊寸前な彼を どうにかするには、一旦 引いたほうがいいのではないかと思った。 自分の世界で、回ってるように見えた彼は、すごく怖かった。 あれは通常ではない。 原因は、 たくさんのプレッシャーや、 不安や、あとは不規則な生活ということもあったのだろう。 とうとう、まともに 話すこともままならなかったから、手紙を彼宛に書いて、マルチからは足を洗った。
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