誘惑

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 でもね、 そこで、仮にね、 そういう関係になったとして、 私はその人の幸せを願うわけで、 どうしたら幸せかってことを 考えてるわけです。 ヒデの件に至っては、 彼は奥さんと子供と別居中ですごく悲しんでいたし、本音は戻ってきて欲しいって、でもどうしていいかわからないって、心が叫んでる気がした。 表には出さなくても、 優しい彼の心は、映し出されていた。 私は家庭崩壊を望んでるわけぢゃない。 どうすればいいのかってことを、考える側。 だから、彼にとって最善の方法をアドバイスする。 奥さんの目線の気持ちを、 伝える。 男女って、理解できない部分があって大変なんだけど、わかろうとすることはできる。 お互いを認める事はできるんだよね。 そういうところで、話をして、 時間を置けば置くほど、 心の距離もできちゃうからって、背中を押す。 電話をさせて、 「飯でもいかないか?」 それでいい。 だって、結婚する前の、 それこそ、付き合ってる時なんかは、お互いを知るために、二人きりでデートしたでしょ? それを今でも、できないはずがないんだよって。 「あいつ、焼肉食わせろとか贅沢いいやがった!」 そうやって、電話が終わったあとに、報告してくる顔は決まって、安心感と安堵感とにやけた口元がついてくる。 よかったね、ほんとによかった。 そして私もつられて、 へんなニヤけ顔になっているんだ。 それが嬉しい。 何かあったら、また連絡してきなよって、いうんだけど、 決まって連絡は一度も来なくなった。 それは、みんなが仲良く、 幸せに頑張ってる証拠。 そう、考えるだけでも 私の口元はまた、にやけてくるんだ。 そういう人間が、 永岡 理緒なんです。
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