誘惑

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初日はてんやわんやだった。 まず、 お酒の作り方も わからないんだもの! ロックに水割り、 マドラーにグラスの種類‥ 何が何やら、 さっぱりわからない! 「おっ、新人頑張ってるね!」 入ってきた 次のお客は かなり酔ったこの店のママと 常連さんだった。 「目の前うろついてたから、つれてきたのよー!あっ理緒ちゃんとけいがココついてね!」 ボックス席に 行くように言われた。 まだぎこちない手つきで おしぼりを一人一人手渡しする。 お客様のボトルやグラス、 氷はけいさんが出してくれたので、スムーズにセットできた。 「かんぱーい!」 ぐぐっと飲み干すママは すでに、かなり出来上がっている。 「かなり飲んでるときのママには注意して!絡まれてもニコニコすると根性あるって思われるよ!泣き出して辞める子も居るから・・・」 コショコショと助言してくれたのはサラさんだった。 この店で、サラさんはNO.1。 キャバクラではないので、 指名が数字で出るわけではないけれど、サラさんを 目当てとして通うお客様は とっても多い。 「あれ?今日はサラ同伴じゃないのかい!?珍しいこともあるんだねぇ~いやーサラ、にくいほど可愛いねぇ~サラみたいに他の娘も、もっと客とってきてくれるといいのにさぁ!ねぇ理緒ちゃん!」 「は‥ぃ。頑張ります。」 少し自信はなかったが、 エヘヘと笑って答えた。 チラリと横を見ると、 けいさんの拳が震えていた。 今思うとそれは、 チーママとして期待されてない苛立ちか、女としてのプライドか‥ 両方だったかもしれない。 MOMOは結局、 そう長くせずに、去った。 今だからいえることだが、 けいさんの大人げない いじめもあった。 わざと体を触ってくるお客をアポで呼び、自分は嫌だからと、着かずに私に入るようにと指示する。 水割りのお客さんなのにロックだよと嘘を教えられて、そのまま出してしまったこともあった。 「調子はどう?楽しくやってる?」 まいが心配して聞いてきた。 こういうことが あっているが みんなナイトはそうなの かと聞くと、 「うちはそんなことはないけど・・・・。すごいね。。。」 やはりうちだけなのか‥ クラブや指名制ならありがちだが、スナックでこんなことが?とちょっと苦笑した。
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