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夏間近だというのに肌寒さを感じる夜。
俺は菊川麗子とのデートの帰り道、公園に立ち寄った。そして赤いベンチに2人で座る。
夜ということもあり周りには人はいなく、切れかかった街灯だけがチカチカと俺たちを照らしていた。
「長谷川くん! 今日は楽しかったよ。ありがとね」
長谷川とは俺のことだ。長谷川真琴。それが俺の名前だ。
「俺も楽しかったよ」
と、言うと菊川は微笑んだ。
俺はこの菊川の笑顔を見るのにどれだけ苦労したことやら。
菊川とは大学のゼミで知り合った。暗くていつも1人でいた菊川は大学でもかなり浮いていた。
明るくて元気な俺とまったく正反対の菊川と、まさか数ヶ月後にはこんな風にデートする仲になるとは思ってもいなかった。
きっかけはほんと些細なことだ。たまたま菊川をいじめていた女子から彼女を守ってあげただけ。
そしてその日から彼女のことが気になり始めた。またいじめられるんじゃないだろうかとか。俺がいない所でいじめられてるんじゃないだろうかとか……。
気づけば俺は彼女を好きになっていた。
――そしてここからすべては始まったのだ。
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