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「米泥棒とはお前のことみてぇだな。」
1863年、世間で騒がしている米泥棒が民家に逃げ出したと情報が入り、10番隊長原田左之助ひきいる隊士が、押し入った。
目の前には、米俵を担いで逃げよとする男がたっていた。
「原田さん、どうします?米ごと担いでいきやすか?」
隊士の一人は腕巻くりをして、やるきまんまんのようすだ。
「おう。そうだな。その様子じゃあ拉致あかねーし、担いでいくか!」
まるで、祭りごとのようにハシャイで見せる左之助と隊士らは慣れた手付きで、あっという間に男を取り囲んだ。
「新撰組か…べ、べつに怖かねーんだよ。」
「にしては、逃げ腰になってんじゃねーか。」
左之助は嘲笑うように、男を見下す。
「う、うるせー。捕まえれるなら、捕まえてみろ!米泥棒ごときで騒ぐとは新撰組も落ちたもんだな。」
「落ちたかどうかは、屯所のほうで味わってもらう。おい!お前らさっさと連れていけ!」
取り囲んでいた隊士が一斉に飛び掛かると、男の手首に縄をかけ引きずるようにして連れ帰った。
残った米俵を左之助がヒョイっと持ち上げ肩にかけて隊士らの後を追う。
「たく、何でオレが、こんなことしなきゃなんねーんだよ。」
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