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屯所に帰った左之助は真っ先に藤堂平助の部屋に酒を持って駆け込んだ。
非番であった平助は、不機嫌な左之助を見て面倒くさそうな顔付きに変わる。
「おい!酒付き合え!」
ドンッと酒の瓶を畳に置くと注げと言わんばかりに平助にお猪口を差し出した。
「なんで、俺が…。新八さんに頼みなよ。」
渋々、差し出されたお猪口に酒をつぐ。
「新八はダメなんだよ。自分の話しかしねーんだから。俺の話なんざ真剣に聞いてくれねーよ。」
「で、なんで俺なんだよ。総司や一くんだっているじゃん。土方さんは…聞いてくれないか…。逆に、説教くらうだけだな。」
「土方さんもだけどよ、近藤局長まで、俺に米泥棒を捕まえてこいって言ったんだぜ?あんなもん、下の隊士に任せりゃいいのによ。最近、そんな仕事ばっか…」
グイグイ酒が減っていくのを平助は唖然として見ている。
左之助が酔ってくると、愚痴っぽくもなるが、昔にあった自分の自慢話をしはじめる。
酒の場でなん十回と聞いてきた平助らは耳にタコ状態だ。
酔いがさめると、本人は、そんな話をしたことすら覚えてないらしい…。
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