其の壱:源義経(前編)

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義経さん本人から見たら、なーんでまどろっこしい事してんだ? なんて思ってたはず。 これって多分、一生埋まらない溝。 なんでこんな状況に陥ったのか? おそらくは育成環境と教育環境の差だったと思うんですよ。 頼朝兄ちゃんは、曲がりなりにも源氏の棟梁。 ある種の帝王学を叩き込まれたと思います。 むろん戦のルールなんかも。 人質状態だから、因縁つけられない用心深さ、近づいてくる連中の真意を見抜く観察眼ってのが、かなり磨かれていたと思うんですよ。 この能力って実社会で、かなり使えるスキル。 特に人の上に立とう! なんて人には、この上ない。 頼朝兄ちゃんは、かなり厳しい生活環境下で、これを身につけていた。 一方の義経さん。 物心ついた頃から寺に預けられたって辺りは、まぁ名門の子息としちゃ苦労したとは思う。 けどね?逆に言えば、ちやほやされた経験がない分、落差がわからないから周囲が思うほど本人の深刻度は高く無かったんじゃないか? と思う訳ですよ。 まぁ年齢も低かった事もあるけど、当時の社会通念からして、寺にいれば身の安全は保証された様なもの。 加えて、いくら厳しく育てたといっても、そこは名門の子息。それなりに遇されたはず。 少なくとも一般庶子とは違う扱いだったと思う訳ですよ。 ただ悲しいかな、一般教養はともかく武士たる為の教育は受けなかった。 まぁね。普通なら坊さんか文化人。 間違っても軍人なんて職業選択なんて、誰もありえないと思ってたはず。 あの頃の情勢考えれば、これは自然な考えだと思う。 ところが! 軍人デビューの機会が出来た! 頼朝兄ちゃんが、どのくらい義経さんの才能を見抜いていたかわからない。 もしかしたら、最初から使い捨てるつもりだった可能性はあるよね? だって実の弟っていっても母親違うし、双方の境遇からしたら、会った事なかった可能性が高い。 ってか、少なくとも義経さんが覚えてるはずがない! だって幼児どころか乳飲み子だったんだから! 周囲から 『あんたら兄弟なんだよ』 なんて言われても、本人達からしたら、 『へぇ?そう?』 ってなもんですよ? いやいや!きっと時代劇の一場面の様な感動の再会だったに違いない! なぁんてあなたっ! 仮に、明日目の前に知らない奴が現れて
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