くたびれた灰色の本

いち

玄関すぐのダイニングキッチンから、当時の彼女が言った。

『ねー餃子に何はさむ？』

その先の散らかった洋室六畳で、ゲームをしていた僕は答えた。

『はさむ？どういう事？』

『だからー。餃子の中身は何がいいかって事。』

『何でもいいよ。てかはさむじゃなくて包むでしょ？君はどこ生まれ？パプアニューギニア？』

『えー！普通はさむっていうでしょ！てかこっち見て喋れば？』

『今むり、負けそうだから。つか、はさむってウケる。何？積み重ねる感じ？』

『いいから！何はさむの！？』

『だから包むだって！』

その時、ゲームを一緒にやっていた友人が言った。

『いや。普通いれるって言うだろ。』

『はさむでしょ』

『包むだよ』

『いれるだろ』

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