くたびれた灰色の本

いち

見猿。

聞か猿。

言わ猿。

ずっと一緒にいる。

ずっとずっと昔から。

その間ずっと。

見猿は暇さえあれば何かをしゃべっている。

でも、二匹とも文句は言わない。

聞か猿には聞こえないし。

言わ猿はしゃべれないから。

それに、言わ猿は迷惑だとはあまり思っていない。

見猿は不安でしかたないんだろうと気の毒に思っているから。

もしかしたら。

自分はもう、ひとりぼっちかも。

と見猿はいつも考えているのだ。

そして、二匹にはできることがほとんどない。

。