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ケータイが鳴る。
お母さんだろう。
「昼御飯出来たよ。降りてくる?」
「うん」
一言そう答えて電話を切る。
同じケータイ会社同士で、夜の9時まで無料で通話出来るから、家の中でもケータイで連絡を取る。
あたしは起き上がって、手の甲で涙を拭う。
部屋を出て、洗面所で顔を洗う。
鏡に映るあたしは、泣いていた形跡はない。
こんなの日常茶飯事だ。
泣いていた事なんて、誰にもバレない。
鏡に映るのは醜いあたしの顔だけ。
あたしは鼻をかんで、1階に降りた。
黙って食卓につくと、小さく、
「頂きます」
と言ってご飯を食べ始める。
お母さんとおばあちゃんの会話が耳に入ってくるけど、あたしは黙々と食べる。
あたしの胸に黒いものが渦巻く。
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