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「無くしたロッカーの鍵から伝説の秘宝まで、なんでも承ります! そう、あたしゃあ探し屋です!」
大きな声で決まり文句のような言葉を投げ、ジェシーに向かって右手の親指を突き立てる。
彼女は突然の大声に両手で耳を塞いだ。
本人はわかっていないようだが、ここはまだ早朝の商店街だ。
「迷惑よ」
「客は久々だ。いやぁまったく、最近は不景気もいいとこでな」
「あんただけよ。国の経済は安定してるわ」
「そんなことより、店に案内するぜ。こっちだ」
不意に歩き出したスペンサーに、ジェシーは呆れ顔でついていく。
“探し屋”
それは、依頼人のあらゆる要望に応え、その欲望を満たしてくれるというもの。
世の中には、まだまだ未知なるものが無数に存在しており、それらを私欲で探求するのも探し屋の特徴だ。
しかし、秘宝探しにはかなりの危険が伴うため、これを職業にしている者は少ないのが現実。
その中でも、スペンサーは数々の実績を持つ男。
表の顔は町の嫌われ者だが、裏では有名な“探求者”なのだ。(噂だが)
「あんた、この国の人間じゃないと言ったな? 出身は東国の方か?」
またまた不意に、スペンサーはそんな質問を投げかけてきた。
「なんでそう思うのよ?」
「さっき留置所で、警官に両手を合わせて礼を言ってたろ? 東国民の証だ。言葉にも訛りがあるし、少しだけど」
彼の推測は当たっていた。
彼女は初めて、スペンサーという男に感心を持った。
洞察力はそれなりのもの。加えて知識の数。
まだ謎の多いところもあるが、彼女は現時点で少しの期待を抱いている。
彼なら、自身の望むものを手に入れるかも知れないと。
「あ、あそこだ」
しばらく歩くと、スペンサーは前方にある建物を指差した。
その視線を追っていくと、ジェシーの目にその建物が映る。
そして、それを見た彼女が最初に言った言葉が……
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