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鞭が無造作に絡みつくことによって、再び扇子は強制的に折りたたまれた。
そしてそのまま、
「いッ!?」
鞭を振るい、スペンサーに向けて扇子を叩きつける。
「キハハハ、私の“解宝”が終わるのを待つ予定だったみたいですが、そう簡単にはいきませんよ」
凄まじい衝撃。
なんとか横に踏み込むことでかわした彼だが、すぐに気づいた。
今の攻撃で、扇子に衝撃がチャージされているのだ。
「くっそ、ジェシー!」
今度は横に振り抜かれる鞭を屈んで避け、叫ぶ。
鞭は勢いを失わずに壁へ激突し、またしても扇子に衝撃を加算した。
「お前は先に逃げて、予定通りに通路を進め! こいつは俺が食い止めるからよ」
「何言って……」
「いいからいけ! 依頼人のお前に任せるのはシャクだが、そうも言ってらんねぇだろ!?」
目指すは地下街の奥深くにある立方体。
ジェシーはこの迷路のような道筋の攻略法を知るハズもないが、こんな場所で用心棒との戦いを続けるわけにもいかない。
「でもあたし、見取り図を覚えてないわよ!?」
「勘で進め!」
足元を狙う鞭を後ろに飛び退いて避け、一発の火の粉を右手のアイムから放つ。
だが、扇子に巻きついた鞭の戻りが早い。
火の粉は防がれ、炸裂することで発生する業火も扇子からの突風で打ち消された。
「あのままでも風を撃てるのかよ!」
必死に奮闘するスペンサーを見て、ジェシーは覚悟を決めた。
「じゃ、そいつ任したわよ」
「ああ……さっさと盗んで脱出しろ」
ボサボサの金髪を振り乱す彼にこの場を任せ、ジェシーは走り去る。
「おぉっと、逃がしやしませんよ!?」
すぐにリックスが鞭を構え、扇子に巻きつけたまま限界まで直線的に伸ばした。
が、
「るせぇんだよ、お前は俺と戦ってりゃいいんだ」
二発の火の粉が鞭に命中し、攻撃の軌道を変えてジェシーに届かせない。
「キハハハハ! やってくれますねぇ!」
「そりゃお互い様だ……こっちは予想外の足止めを喰らってんだからよ」
二発の“火達磨胡桃”が命中しても、黒い鞭に損傷は見当たらない。
“解宝”を我慢しているスペンサーに、勝ち目などあるわけがなかった。
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