ルックスランド地下街

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二人は前を向いて歩いたまま、視線だけを互いに合わせて回避の段取りを組む。 幸い、先程の警備員達が倒れているのは彼らの後方にある曲がり角の奥。 今いる場所からは、気づかれることはない。 「侵入者が現れたという話を聞いたんだが?」 警備員の男は二人を仲間だと思い込み、話しかけてきた。 予想外だが狙い通りの反応に、二人の詐欺師スイッチが入る。 「そうだ、俺達もすぐに駆けつけたが奴らは強い……あの角の奥は悲惨だぞ?」 曲がってきた後方の角を指差し、トニーが自分でやったことの状況を説明する。 「頑張ったが逃がしてしまった。どうやら、下手に戦いを繰り広げる気はないらしいな」 ライスもまた、あごに手を当てて喋り出す。 二人は打ち合わせ無しで、互いの話に合わせながら会話を行っている。 「……なぜ顔に布を巻いてるんだ?」 警備員からの質問に、ライスは言葉を返せなかった。 驚いたような反応を見せ、不自然に咳込む。 しかし、 「侵入者に刀で斬られてな、傷は浅いが応急処置だ」 「お前達、刀は?」 「奪われたんだよ、それで顔を斬られた。あいつら、次に会ったらぶっ殺してやるぜ」 トニーはすんなりと、嘘に嘘を重ねる。 「鞘ごとか?」 「ああ、鞘ごとだ。売れば金になるだとか、おかしなことを言ってたな」 「その手には何をつけてるんだ? 革手か?」 「これか? 昨日の夜に蕁麻疹(じんましん)が出てよ、素手じゃ刀を握れねぇんだよ」 瞬時に様々な理由をつくり、怪しまれないように会話を続ける。 だが、警備員は思いのほか鋭かった。 「お前達、見ない顔だがどこの所属だ?」 「しょ、え? なんて言った?」 「所属だよ、お前達はどこの警備担当だ?」 「さっきから質問ばっかりだな、お前はどこの所属なんだよ?」 「俺は第六警備部隊だ」 「じゃあ俺達は第五警備部隊だ」 危なかったが、これで一応は会話が成立する。 が、 「おかしいな、第五警備部隊は地下街じゃなく、カジノ警備のハズだろ?」 やはり誤魔化し切れない。 そこでトニーは、 「黙ってろ!」 両手に紫電を纏い、男の顔面を殴り飛ばした。
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