ルックスランド地下街

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「……おいおい」 今の一撃を見て、ライスは呆れた表情で気絶した警備員を見つめた。 敵は一人だけだったので有効と言えば有効なのだが、人を騙す詐欺師の面目は潰れかけている。 「あまり時間もねぇし、てっとり早くいこうぜ」 両手に紫電を纏ったまま、トニーはあっさりと開き直る。 彼の言うことはもっともなのだが、もう少し頑張れば地下街の警備状況を聞き出せたかも知れない。 ライスはそれが残念でならなかった。 「早くいくぞ、二時間後にはホテルに戻らねぇといけないからな」 そう言い放つトニーは計算の天才。 自身が歩くスピード、立方体までの距離、帰る為の時間を考え、どれくらいかかるかをすでに割り出していた。 結果は二時間ちょっと。 このまま戦闘を回避し続けても、集合時間には遅刻してしまうという答えが出た。 しかし、戦闘を回避し続けるなど不可能。 今まさに、一人の実力者が彼らの前に現れようとしていた。 そして、 「あらら? 警備員同士が戦ってら……何事だ?」 後方からの声に反応し、トニーは問答無用で振り返り様に電撃を放った。 それは見事に声の主へ命中。 警備員の格好をしている細身の男を包み込んだが、予想外の異変が起きた。 「なんだ?」 「ん?」 トニーの反応を見て、ライスも後方へ視線を移す。 そこには異様な光景が待っていた。 電撃を受けた警備員の姿はなく、あるのは人型に形造られた木製の人形。 等身大で固まったままのそれの背後から、先程の男が再び姿を現す。 「うひ~、危ない危ない。いくらなんでもいきなりは酷いんじゃないか?」 そう言い放つ男は、黒の短髪を綺麗に整えた若い青年だった。 警備員の格好をし、右手の中指に木製の指輪をはめている。 「な!?」 そんな彼を見て、驚愕したのはライス。 「なんでお前さんが、こんな場所にいやがる……?」 彼の口調からして、青年の登場はかなり深刻なようだ。
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