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―――――翌日
ジルバ王国首都、ジルバタウンから南へ70キロの荒野を越えたところにある街、“ラウナシティ”。
この都市は高級住宅街として有名であり、世界で三番目に高い電波塔が建てられている。
見渡す限り、屋敷、屋敷、屋敷。
ジルバタウンは大きな港があるが、ここには巨大な浜辺がある。
つまり、ジルバ王国が誇るリゾート地でもあるのだ。
首都に住む貴族達が建てた別荘が浜辺近くに並び、夜になると海から離れた場所にある繁華街がにぎわいを見せ始める。
まさに、娯楽の都市。
治安の良い国ならではの、パラダイスと呼ぶにふさわしい場所だ。
その街の中央区にある、とある大きな屋敷の前に、三人はやってきていた。
ジェシーの依頼を承諾したスペンサーとトニーは、まず秘宝に関する情報を集めるべく、“知り合い”を訪ねてきたのだ。
「嫌だって言ったじゃん」
腕を組むトニーが、険しい表情で屋敷の入口を見つめている。
彼はここに来ることを断固反対していたが、ジェシーの強い要望により、ついに折れた。
「俺だって逃げ出してぇよ」
隣に立つスペンサーも、腰に手を当てながら全身には脂汗。
しかもダラダラ。
彼は、警官に連行される時よりも緊張していた。
「でも、ここにいるんでしょう? “ログロット教”に詳しい人物が」
二人の様子を見ていると、ジェシーまで不安に襲われてくる。
「確かに詳しいけどな」
「あ~、面倒くせぇ。あいつに会うのは何年ぶりだっけ?」
彼女の質問に、二人は容量の悪い答えしか返さない。
しかも、彼らはなぜか戦闘準備万端だ。
スペンサーは両側の腰に装着したホルダーに、黄金に煌めく二丁の銃を装備している。
トニーは全身迷彩服に着替えており、肘まである紫色の篭手(こて)を両腕にはめていた。
その掌の中央には瑠璃色に輝く宝石。
これは彼らが扱う、特殊な武器だ。
ジェシーが調べた通りの姿なので、彼女は少し安心している。
これらを使いこなせることが、偽者でない証になるからだ。
「さて、行くか」
覚悟を決めたスペンサーは、震える指で屋敷のベルを鳴らす。
彼ら二人の知り合い“達”。
ジェシーはそれについても、調べを終えている。
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