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「なんだここ?」
口を開いたのはトニー。
ライスが開いた扉をくぐり抜け、一足先に中へ進んでいった。
分厚い扉の向こうには、何も無いただの真っ白な空間。
地下なので窓がないのは当然だが、これだけのスペースには机や椅子、棚のひとつさえ見当たらない。
「わけわかんねぇな、ただの余り部屋か?」
「さぁな、もしかしたら何か意味があってこんな光景になってるのかも」
扉を閉め、二人は部屋の中央に向かって歩き出す。
と、そこへ、
「その通りだ」
高い天井が綺麗な丸型に刳り貫かれ、ゆっくりとエレベーターのように床へ降りてくる。
その円上の足場の上には、
「ここは侵入者を駆除する為の場所、貴様らはまんまとここへ誘導されていたのだ」
鮮やかな金髪を揺らし、長い太刀を背中に背負った大男。
この無法国家の警備主任を務める、アート・プセタンスだ。
「誘導だとぉ? 俺達の行動はお前らに筒抜けだったってことかよ?」
「そうではない、ある物を狙ってこの地下街に入った者は、必ずこの部屋を通る。俺はただ待ち伏せをしていただけだ」
円上の足場から降り、言い放つアート。
彼が足場から離れると、それは再びゆっくりと浮上していき、刳り貫かれた天井にピッタリとはまった。
「さて、早速だが駆除を開始するとしよう。詐欺師が二人……我が国に足を踏み入れた罰として、M・クラフト様から直々に刑が執行される」
「冗談じゃねぇぜ!」
早くも出会ってしまった最悪の敵。
愛刀“竜爪丸”を装備したアートが、再び彼らに牙を剥く。
「まずは貴様からだ…… “シフトフェイス”」
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