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ゆっくりと外開きの扉を開けると、姿を見せたのは鎖で造られたのれん。
それを嫌そうに見るスペンサーと、素早く胸の前で両腕を交差し、防御体勢をとるトニー。
特に何も起こらないまま、時間は流れる。
何本もの鎖が天井から垂れ下がっているので、中は確認できない。
「鎖……」
ジェシーは小さなつぶやきをあげて、眉を潜めた。
二人を調べた際に、名前の上がった五人の男女。
合わせて七人。彼らはある“組織”を裏切り、今こうして二人はここにいる。
その中に、鎖を扱う者がいたのを思い出した。
鎖と鎖の繋ぎ目は丸いタイプのものなので、“∞”という画が表されている。
裏に生きる者なら、誰でも知っている。
∞が示す意味と、その恐怖を。
「入るなってことだな」
トニーは後方に数歩下がり、防御を解いた。
確かに、鎖で阻まれた入口を見ればそうとも考えられるが、
「会うのが嫌なだけでしょ?」
ジェシーは冷たい口調で言葉を返し、入口の前に立って鎖を横にずらしてみる。
あくまでのれんなので、侵入は容易い。
カチャカチャと金属の音が鳴るものの、だからどうということはなかった。
「入りましょうよ。待ってるかも知れないし」
肩越しに二人(まだ警戒中)を見て、彼女は鎖に手をかけたまま呼びかける。
「ああ、そりゃ待ってるさ」
「借りた金返してねぇし」
スペンサーとトニーは即答すると、辺りを警戒しながらも入口に近づいてきた。
「何がそんなに怖いのよ」
呆れた表情でつぶやくジェシーは、難無く屋敷内に侵入成功。
彼女が手を放したことで鎖は再び垂れ下がったが、
「中の人物に決まってんだろうが」
滑り込みで、スペンサーが中へ飛び込んできた。
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