七人の反逆者

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「え……?」 不意過ぎた出来事に、ジェシーはその場で硬直。 見つめる先は、さっきまで隣で銃を構えていたスペンサーが引きずられて行った廊下の奥。闇の先だ。 今まで感じていなかった恐怖が急に滲み出し、冷たい汗が頬を伝う。 最後に聞いたスペンサーの声が断末魔なんじゃないかと、錯覚するほどだ。 「おい、どうした?」 のれん越しに聴こえるトニーの声で我に返り、ジェシーは冷や汗を拭って覚悟を決めた。 そして鎖に手を触れるが、何も起こらない。 「来て!」 その隙にトニーを屋敷内に呼び入れ、手を放してのれんから離れた。 「スペンサーは?」 「中に引き込まれたわ……一瞬だったから、何が起きたかわからない」 それを聞いたトニーの顔には、また意味不明な引っ掛かり方をしたサングラス。 どうやら彼が動揺したり、慌てたりすると、なぜかサングラスの位置がズレ、こうなるようだ。 この理由と経緯は、長年の相棒であるスペンサーにもわからないという。 「とにかく、奥へ行くぞ。警戒を怠るな?」 サングラスの位置を戻し、オールバックの黒髪に引っ掛かける。 「……わかったわ」 ジェシーは彼の後に続き、廊下を進み始めた。 高級感漂う赤い絨毯は、奥に行けば行くほど廃れてきている。 廊下に、家具はひとつもない。 あるのは天井に吊り下がった照明。 それも、今は機能していないようだ。 「こっちだ」 トニーの案内で廊下を歩いていくと、途中でいくつかの扉を素通りしている。 一応、屋敷内の地理には詳しいようだ。 再び脳裏で確認するが、この屋敷の所有者と二人は知り合い、味方、仲間のハズである。 ならばなぜ、こういう事態に陥っているのか。 いくら考えても、ジェシーは答えを見つけられない。 「よし、慎重にな」 しばらく長い廊下を進むと、目の前に赤い大きな両開きの扉が現れた。 おそらく、広間に出る為のものだろう。 「開けるぞ?」 トニーは言いながら、右手で扉を強く押す。 左手は握り締めて拳を作り、何があってもいいように警戒体勢をとっていた。
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